「あなたは私を一人の女として見てはくれない。
あなたの目に映る私はただの子供だから。
あなたにとって私は他の家族と同じ。
だから私は決してあなたを「当主様」とは呼ばない。」

左から誠刃、縁(えにし)、誠刃(せいは)。
この二人は前世で添い遂げられなかった恋人同士でした。
しかし縁は夢の中で前世と未来を混同した夢を見て育ちました。
だから再会した時は死ぬほど嬉しかったそうです。
例え誠刃の命が残り僅かだったとしても。(1歳2ヶ月)。


一方、誠刃の方もおぼろげではあるものの前世の夢を見、
顔もよくわからない乙女に恋をしていました。

当時二人は夢の出来事を話すことはありませんでしたが、
他の一族と態度の違う縁を誠刃はとても気に入り、大切に育てました。
成長するに従い、やがて誠刃は夢の中の恋人の面影を縁に見るようになりました。

しかしそんな誠刃にも交神の話が持ち上がるようになりました。
それを知った縁は雨の中、傘も持たず家を飛び出します。
心配して探しに行った誠刃は思いだします。

夢の中の恋人は落ち込むとよく花畑の中で眠っていました。
誠刃は紫陽花の咲き乱れる寺を訪れます。
そこに蹲って泣いている少女を見つけました。
縁です。「帰ろう」という誠刃に縁は黙って首を振ります。

そして縁は思わず自分の思いの丈をぶつけて去っていきます。
それを止めようと腕を掴んだ瞬間、誠刃は亡き恋人の顔を思い出します。
縁の顔と瓜二つの恋人の顔を…。

誠刃は約束をします。
必ず氏神になる。だからもう泣くな…と。

当時、最高の素質を誇り、他の家族から尊敬の目で見られていた誠刃でしたが、
神様と子供をつくることはありませんでした。
しかし見事氏神入りを果たし、成長した縁を迎えることとなりました。
そして不思議な事に彼らは再び廻りあい、恋をすることとなるのであります。
絵は成長した縁が誠刃の元へ交神に来た再会の絵です。





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