「正面ばかり見ていてはこの空の美しい星星も道端に咲く小さな花も見過ごしてしまいますよ。
人によってはどうでもいいことかもしれませんが、それって凄く損なことだと思いませんか?」

「ではいつも正面を向いて走ってる私はきっと石に躓いてひっくり返ってそれで先生とこの空を眺めているのかしら」

「雪さんらしい答えですね。
空にありて星、地にありて人、しかし人は届かない空に恋焦がれて止まない。
あの星の一つ一つにも命があって幾つもの時をかけて流れては消えてゆく。
人の命もまたしかり。
失った命はあの天の光の川を渡り魂の集まる天の国へ行くんじゃないかと思うのです。
そこには沢山の懐かしい人たちが待っていて私達を見守っている…。
私の母や雪さんのご家族もきっと見守っていてくれてますよ。
だから残された者は決して独りではないのです。」



雪はにっこり笑って時々毒を吐く人で、
自分に厳しくどんなに辛くても簡単に人前で泣く事はない人です。
それは母、響(女38番/火髪土目風肌/壊し屋)の影響で母響は
普段はあっけらかんとしていますが浮き沈みの激しい人でいつも遠くを見ては泣いてばかりいる人でした。

その姿を見て育った雪にとっては自分は母のようにはならないなりたくないという強い信念みたいなのがありました。
そんな雪が人前で泣いた事がありまして、それが泉地と初めて出会った時でした。


泉地は自称学問の先生で、(若いですが)星を観測するのを密かな趣味としていて、
鳥の研究をしててちょっと変わった方です。
幼い頃から病弱で本を読むのが好きで夢見がちな人です。

泉地と雪が出会ったのは7月の雨の日でした。
橋を渡る途中で、子供にぶつかり、その拍子に雪の大切にしていた今は亡き憧れの人、
双龍(男15/火髪火目風肌)にもらったお守りを川に落としてしまいます。
身を乗り出して川を覗き込んでいた雪を自害と勘違いした泉地と沙絵という女性が止めに入って説教したのでした。

流れていくお守りに雪は思わず泣いてしまいました。
が、若い白髪交じりのボサボサの頭、
厚底眼鏡で一生懸命説教をする今まで周りにいないタイプの泉地に雪は興味をもちました。
一方、泣いてしまった雪に困った泉地、オロオロしながらも泣き止むまで傍にいて
ずっと優しい言葉をかけてくれていました。

それがきっかけで3人はなかよくなりました。
最初は好奇心だった雪ですが泉地の優しさに触れ、彼に恋をしました。
しかし彼の傍にはいつも沙絵という女性がいて雪はいつも羨ましく思っていました。

そんなある日、討伐から帰った雪に泉地が持病で倒れたというしらせが届きました。
顔面蒼白な泉地を前に雪は祈るような気持ちで看病しました。
その甲斐あって3日後泉地は目を覚まし、雪の顔を見るなり優しく笑いかけました。
そして玉砕覚悟で雪は自分の気持ちを告げますが断られてしまいます。
我慢していた涙が溢れ、雪はその場を急ぎ足で去っていきます。
それを見て察した沙絵が泉地を怒ります!

「お兄様は雪さんに惚れてるくせになんで悲しませるようなこと言うの!!雪さんが可哀想だわ!!」
泉地は雪に惹かれていましたが、これ以上一緒にいると余計に悲しませることになると悟っていました。

しかし数日たったある日から何事もなかったように雪がまた現れるようになりました。
雪は言います「何度振られ様とも何度来るなと言われ様とも
私はどこまでも泉地さんを追いかけます。それが私の生甲斐ですから。」

これに観念した泉地は自分の気持ちを雪に告げ、
二人は晴れて恋人同士になります。

しかし幸せな日々は長くは続かず、11月の寒い日に泉地は鬼の流した流行り病に倒れ、亡くなってしまいます。
泉地は雪に「決して自分の後を追いかけてくれるな。」と告げて亡くなります。
そして雪はその言葉通り生きることを決め、次の月に交神に挑むこととなります。

長くなりましたが乱文にお付き合いいただきありがとうございましたm(_)m


戻る